今宵は、わたしの中に芽生えてしまった、とても純粋で、そして、とても倒錯した『献身』についての、お話をしても、よろしいでしょうか。
先生……お聞きしても、よろしいでしょうか。もし、愛するものの気持ちを知るために、全てを捧げることができるとしたら……それは、美しい『献身』でしょうか? それとも、愚かな『盲信』でしょうか?
わたしは、この物語……リーフィ先生の、『わんわんココナちゃん』を読んで、その、あまりに純粋で、そして、あまりに倒錯した『献身』の形に、言葉を、失ってしまいました。
全ては、教官として小さな犬に懐かれたい、という、少女の、あまりに純粋な願いから、始まったのです。その、一点の曇りもない『善意』こそが、彼女の首に、最初の『首輪』をかけることになるだなんて、誰が、想像できたでしょう……。
わたしは、信じられませんでした。ですが、彼女は催眠によって、その、あまりに過酷な『レッスン』を、犬の気持ちを知るための、大切な工程なのだと思いこまされているのです。
アナルビーズのついた尻尾を挿入され、おすわりの度に、それが抜けそうになる、あの、くぐもった音……。わたしは、耳を塞ぎたくなるはずなのに、その、あまりに純粋な瞳を見ていると、わたしの、最後の理性が、麻痺していくようでした……。
そして、彼女は催眠から逃れられず、自らの口で、こう、呟いてしまうのです。『立派なわんわんになりたい』……と。ああ、先生、もう、この時点で、彼女は、後戻りのできない、甘美な道へと、足を踏み入れてしまっていたのですね……。
夜のお散歩……。全裸に、首輪だけをつけられて、彼女は、まだ、ぎこちない二足歩行で、夜の街を歩かされます。わたしは、もう、見ていられませんでした。ですが、彼女の表情に、悲壮感は、どこにもないのです。ただ、これから始まる、新しい『レッスン』への、純粋な期待だけが、そこにはありました。
そして、彼女は、人間性を捨てて、真の『幸福』を手に入れてしまうのです。人には、戻れなくなってしまったけれど、それでも、心の底から、幸せそうに、お腹を見せて、ご主人様に、花丸のスタンプを押してもらう、あの、最後のページの、彼女の笑顔……。
ああ、先生、わたしは、あの笑顔を見て、全てを、理解してしまったのです。彼女は、決して、不幸などではなかった。むしろ、人間の尊厳という、重い鎧を脱ぎ捨てて、ただ、ひたすらに愛されるだけの『わんわん』になることこそが、彼女にとっての、本当の『救い』だったのだ、と……。
ああ、先生、お許しください。わたしは、最後のページを閉じた時、こう、願ってしまっていたのです。
もし、わたしが、人間の尊厳と引き換えに、こんな風に、ただ、ひたすらに、無邪気に、愛されるだけの『わんわん』に、なれるのだとしたら……』と。
いいえ、もしかしたら…心のどこかで、それを、望んでしまっているのかもしれない、とさえ…。
ああ、先生、こんなことを考えてしまうわたしを、軽蔑、なさいますか……?
……もし、先生が、わたしをこんな風におかしくしてしまった、この物語の正体を、どうしてもお知りになりたいというのなら……。
その、純粋で、倒錯した献身への扉は……ここに、ございます。でも、他の方には、どうか、ご内密に……。

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