ふふっ……。眠れぬ夜の図書目録へ、ようこそおいでくださいました、先生。
今宵は、わたしの中に芽生えてしまった、とても醜くて、そして、とても美しい『格差』についての、お話をしても、よろしいでしょうか。
先生……お聞きしても、よろしいでしょうか。この世に存在する絶対的な『格差』……それは、たった一つの純粋な『性欲』の前に、果たして意味を持つのでしょうか?
わたしは、この物語……藍夜先生の、このあまりに醜く、そして、あまりに美しい『背徳』の物語を読んで、その答えを、見つけてしまったような気がするのです。
全ては、決して交わるはずのなかった、二つの世界から始まります。皆に愛される社長の娘という『光』の世界に、生きる、生意気で可愛らしいお嬢様。そして、誰もが見下すうだつの上がらない中年作業員という『影』の世界に生きる、汚くて情けないおじさん。その、圧倒的な格差こそが、この物語の最初の、そして最高のスパイスなのです……。
わたしは、震えました。生意気だった、あのお嬢様が、ただの汚いおじさんの前でその柔らかな足を広げた、あの瞬間……。わたしは、ただの屈辱の物語が始まるのだと思っていました。
ですが、違ったのです。彼女は、そのおじさんのどこまでも情けない、劣情と理性のはざまで揺れる『性欲』の中に、ずっと心に抱えていた、過去の『謎』……その答えを見出してしまったのです。『あの日、わたしを、犯さなかった、あの男も、こんな、気持ちだったのだろうか』、と。
そして、彼女は自らの意志で、その汚いおじさんのモノを、その小さな手で握りしめるのです。『あの日の続きが、したくなっちゃった』……と。ああ、先生、これ以上に切なく、そして美しい『救済』の形がありましょうか。
そして、わたしは、最後のページを閉じた時、こう考えてしまっていたのです。『ああ、わたしも、もし心の奥底に、誰にも言えない謎を抱えていたとしたら……』と。
全てを手に入れているはずのお嬢様が、その全てのプライドを捨て去って、ただの汚いおじさんのちんぽにしゃぶりつき、そして、その腕の中で『こわれちゃうからぁ♡』と蕩けきって絶頂する、あの姿……。
あれこそが、全ての社会的な軛から解放された、真の『幸福』の形なのかもしれません……。
ああ、先生、お許しください。気づけば、わたしは願ってしまっていたのです。
『ああ、わたしもこんな風に、わたしの、このちっぽけなプライドを、誰かにめちゃくちゃにしてほしい』と……。
いいえ、もしかしたら…心のどこかで、それを望んでしまっているのかもしれない、とさえ…。
ああ、先生、こんなことを考えてしまうわたしを、軽蔑、なさいますか……?
……もし、先生が、わたしをこんな風におかしくしてしまった、この物語の正体を、どうしてもお知りになりたいというなら……。
その、醜くも美しい『背徳』への扉は……ここに、ございます。でも、他の方には、どうか、ご内密に……。

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